本年は9月に入ってからも暑い日が続き、残暑厳しい年となりました。とは言え「暑さ寒さも彼岸まで」と先人の言葉通り、彼岸を迎え過ごしやすい日が続いています。大自然の神秘を感じずにはおられません。

 

 お盆の御供養が終わり、早一ヶ月。お彼岸の季節となりました。
 今年は、年始より新型コロナウイルスが猛威を振るい、春のお彼岸は不安でいっぱいでした。秋の彼岸を迎え、まだウイルスの終息はみえてきませんが、少しづつ世相は落ち着いてきたように感じます。

 【こころ穏やかにいきる】。今の世の中を生きる中で、大切なこととはわかっていても、そう簡単にはできません。ちょっとしたことでイライラ・ムカムカ。最近では、マスクを着用していない人を見るだけで、イライラしストレスを抱える人もおられるとか。

 会社にいけば上司、部下にムカムカ。家庭では嫁姑。子育てにもイライラ。生きている中で、この感情はどうすることもできないものです。

 しかし、このイライラ・ムカムカの心が、悪いものを生み出すこともまた然り。ほんの少しでも解消できないものでしょうか。

 

 その答えはほとけ様の御教えにありました。それが【禅定(ぜんじょう)】です。

 

 禅定とは心を落ち着けること。自分自身の心を見つめ、ゆっくり座り瞑想すること。世間では「坐禅」という言葉をよくききますが、真言宗では「阿字観(あじかん)」という瞑想があります。
 阿字観は単に心を落ち着けるというよりは、もっと深い意義があるのですが、まずは心を落ち着けることが大切と説かれています。

 

 では、どのように心を落ち着けるか。その一つのヒントが「息」です。

 「息」という文字は「自」と「心」から成り立っています。つまり、息は自分の心をあらわしたもの。

 イライラしている時の息(呼吸)はどうでしょうか。きっと荒く、激しいはず。逆に心が穏やかな時の息はどうですか。きっと呼吸も穏やかで、ゆっくりしているはずです。まさに息と心は表裏の関係。
 つまり、息をゆっくりすれば、自ずと心もゆっくりになるということです。

 瞑想では、この体と心の作用をつかい、ゆっくりな呼吸で、穏やかな心にしていくのです。

 

 お彼岸は、この世にいきる私たちの修行の期間でもあります。
 ゆっくりした呼吸を心がけ、ちょっとしたことにイライラむしゃくしゃせず、穏やかな心でお過ごし下さい。

 

 ほとけ様は皆、穏やかです。皆さんもほとけ様の真似をして一日穏やかに過ごせば、一日のほとけ様ですね。

 この一週間、よき修行を共にしていただきますよう、お願い申し上げます。

 

《瞑想(阿字観)のことをもっと知りたい方は、是非お寺にお越しください。住職は高野山の阿字観の指導者でもあります。お寺でゆっくりと瞑想を体験いただけます。要予約ですがお気軽におたずね下さい》

令和2年9月彼岸

福照山 繁昌院
住職 上田希真